自分取扱説明書づくり - 7つの習慣から学ぶ自分の使い方
スティーブン・コヴィー氏の「7つの習慣」をベースに、中高生が自分の特性・得意・苦手を言語化する自己理解のワークについて。
「自分のこと、案外、自分が一番分かってないんだよなあ」。
ある日、中高生の M さんがワークシートを前にしてつぶやいた言葉です。私たちが「自分取扱説明書」と呼んでいるこのワークは、4月から始めて、すでに通算8回。一冊の本を作っていくように、自分のことを少しずつ言葉にしていく時間です。
「説明書」と呼んでいるのは、本人が将来、進学先や就労先で「私はこういう人間です」と渡せる一枚にしたかったからです。家電を買うときに付いてくる、あの取扱説明書のように。
「7つの習慣」を、中高生の言葉に翻訳しながら
ベースにしているのは、スティーブン・コヴィー氏の『7つの習慣』。少し難しい言い回しもある本ですが、章ごとに中高生の生活に置き換えながら、一つずつ取り上げています。
- 主体的である ─ 朝、自分で起きる/起きないを決められるか
- 終わりを思い描く ─ 一年後、二年後、どんな自分でいたい?
- 最優先事項を優先する ─ 今週、外せないことは何?
- Win-Win を考える ─ 友達と意見が違うとき、どう話す?
- まず理解に徹し、そして理解される ─ 聞くことと話すこと、自分はどっちが得意?
- シナジーを創り出す ─ 苦手なことを誰かに頼ってもいい
- 刃を研ぐ ─ 心身のメンテナンス、好きな趣味の時間
毎回ワークシート1枚分くらいの分量を、ゆっくり書いていきます。
「正解」がないから、最初は手が止まる
このワークでスタッフが一番気をつけているのは、「正解」を出さないこと かもしれません。
「得意なこと、書いてみて」と言うと、最初は「得意なこと、ないかも…」と止まる子がたくさんいます。そういう時は、選択肢カードの出番です。「人の話を聞ける」「絵を描く」「ゲームの攻略を考える」「机を整理する」「気持ちを切り替えるのが早い」など、20種類くらいのカードから選びながら整理します。
不思議なもので、選んでいくうちに「これも、得意かも」「これは、苦手だなあ」と、自分の中の区分けが少しずつできてきます。一から書くのは大変でも、選ぶことならできる。それで十分です。
「集中できる環境」を書いてみて、初めて気づく
意外と人気のある項目が「集中できる環境」です。
ある子は「人がいない部屋」、別の子は「適度に音楽がかかっている場所」、また別の子は「決まった席で、決まった文房具がある時」と書いていました。書き出してみると、「ああ、自分はこういうところで力が出るんだ」と本人が一番驚きます。
その日から、家での宿題の取り組み方が変わったという報告もありました。「集中できない自分が悪い」ではなくて、「自分に合う環境を作ればいいんだ」と思えることが、何より大きいと思います。
困ったときの「サポートの取扱説明書」
このシートで一番大事だと私たちが思っているのは、**「困ったときの周りへのお願い」**を書く欄です。
- パニックになりかけたら、声をかけず10分そっとしておいてほしい
- 指示は口頭ではなく、紙に書いて渡してほしい
- 急がせずに、一度の作業は20分まででお願いしたい
こういう「お願い」を、本人が自分の言葉で書けるようになることは、大人になってからの自立に直結すると思っています。「察してほしい」が「言える」に変わる時間です。
プライベートな内容、共有はどこまで
書いた内容は、本人のものです。スタッフも内容にはコメントしますが、本人の同意なく他の人と共有することはしません。
「これ、保護者の方にも見せていい?」「進路先に渡してもいい?」と、シートが完成するたびに必ず本人に確認します。自分の情報を、誰に・どこまで・なんのために渡すか。これも、社会で生きていくときに必要な「自分のことを自分で扱う」練習になります。
完成後の使い方
完成した取扱説明書は、進学や就労の場面で使えるツールになります。実際、卒業を控えた高校生が、進学先のオープンキャンパスで担当者に渡したという話も聞きました。
「自分はこういう人間で、こういう時に困って、こうしてくれると助かります」と、紙一枚で伝えられる。それを書けることそのものが、すでに大きな力なのだと、ワークを重ねながら実感しています。