周辺地域について知ろう - 金曜日の活動
毎週金曜日に行っている地域学習の活動レポート。4-6月で通算29回、生活圏の地理・公共機関・交通を実地で学んでいます。
金曜日の活動は、ほとんどの日、外に出ています。
最初の頃、Aくんは「行ったことのない場所はちょっと…」と入口で立ち止まることが多い子でした。事業所のドアの前で靴を履きながら、それでも結局は出かけてみる。帰ってきて、「次はあそこにも行ってみたい」と地図を指でなぞる。そんなふうに、4月から6月までで合計29回、市が尾の周りをみんなで歩いてきました。
「ここ、なんていうお店だっけ」から始まる
行き先を全部こちらで決めることはしません。前の週の帰りに、その日の写真を並べて「次はどこに行ってみようか」と本人たちと一緒に考えます。
不思議なもので、最初は「決まったところでいい」と言っていた子も、回を重ねると「公民館って、どんな本があるんですか?」「市役所のあの大きな建物、入っていいんですか?」と質問が増えてきます。私たちはなるべく先回りせず、本人の小さな「気になる」がふくらむのを待つようにしています。
図書館で郷土資料を開いてみる日
ある金曜日、市の中央図書館の郷土コーナーで、地域の昔の写真集を広げていました。「市が尾駅、昔はこんなだったんだ」「うちの近所のお寺、こんなに大きく載ってる」。普段は読書が苦手な子が、しばらく黙って写真をめくっていたのが印象に残っています。
地域の歴史は、教科書で覚えるものではなく、自分が毎日歩いている道の話なのだと、こうした時間に気づかされます。
バスとICカードと、店員さんへの質問
少し前の金曜日には、IC カードでバスに乗る練習をしました。乗るときと降りるときにタッチする、目的地までの料金を確認する、運転手さんに「降ります」を伝える。一つひとつは小さなことですが、最初の一回が一番難しい動作です。
行き先のお店では、店員さんに「これってどこにありますか」と聞く練習もしてみました。事前に「すみません、と最初に声をかけるといいよ」「目を見なくても大丈夫、商品を指でさしてもいい」と一緒に確認してから店に入ります。声が小さくても、相手にちゃんと伝わる。それを一度経験できると、次の店ではもう少し落ち着いて聞けるようになります。
「行ったことがある場所」が増えていくこと
地域学習で大事にしているのは、知識を増やすことよりも、「行ったことがある場所」を本人の中に少しずつ蓄えていくことかもしれません。
行ったことのない場所には、誰でも不安があります。でも「あそこなら行ったことがある」が増えていくと、「次はもう一駅先まで行ってみてもいいかも」と、行動半径が自然に広がっていきます。卒業後、自分で電車に乗って役所に行く、自分の足で気になるお店に入ってみる。そういう日が来たときに、ここで歩いた金曜日のことが、足元の手応えとして残っていてくれたらと思います。
スタッフ側で気をつけていること
毎回、出かける前には簡単な打ち合わせをしています。
- 行き先までのルートは、本人と一緒にマップで見てから出る(知らないまま連れて行かれる感じを減らしたい)
- 体力に差があるので、途中で座れる場所を事前に確認しておく
- 危なくない範囲で、「曲がる方向」や「次に何を頼むか」を本人に決めてもらう場面を増やす
- 帰ってきてから、写真を一緒に見ながら次の行き先を決める
派手な活動ではありませんが、毎週の積み重ねで、半年後・一年後の景色が確実に変わっていく実感のある時間です。