テキスタイリング部(火曜日)
毎週火曜日、中学生・高校生が機織りや刺繍に取り組む「テキスタイリング部」の活動について。

カタン、カタン。
火曜日の夕方、教室の奥から小さな木の音が聞こえてきます。手作りの機織り機が、たて糸と緯糸を交互に押さえる音。早足の現代に少しだけ、別の時間が流れている瞬間です。
毎週火曜日は「テキスタイリング部」の日。中学生と高校生が、機織り・刺繍・パンチニードルなどに取り組む時間です。私たちが大切にしているのは、「速く作る」より「ゆっくり、自分の手で覚える」ことの方です。
何時間も同じ動きを繰り返す、ということ
機織りは、シンプルな動作の繰り返しです。シャトル(横糸を通す道具)を一往復させて、押さえる。たったそれだけ。
最初の数十回は、織り目がガタガタになります。糸の張りが揃わない、シャトルを通す速さが安定しない。それでも続けていると、ある瞬間から「あ、リズムが乗った」と本人が気づきます。
このリズム感は、頭で考えて掴めるものではありません。手と目と、布全体への意識が一つになる感覚。スマホの通知に細切れにされる日常からは、なかなか得られない時間でもあります。
「教える側」になる火曜日
部活動として続けていると、自然に 経験者と初心者 のグラデーションが生まれます。1年やっている子が、初めての子に「シャトルはこう持つと安定するよ」と教える場面が、毎回どこかで起きています。
教えるためには、自分の動きを言葉にする必要があります。「なんとなくできてた」が、「こうすれば、できる」に変わる。これが、ものづくりの場での 言語化のトレーニング にもなっていて、スピーチが苦手な子でも、自分の作業のことなら不思議とすらすら説明できたりします。
色を選ぶ時間、それだけで30分
毎週、最初の数十分は「今日、何の色で織るか」を選ぶ時間です。
棚に並んだ毛糸玉から、3〜4色を選んで、机に並べてみる。「思っていたのと違う」「あ、この組み合わせ、好きかも」と、自分の感覚と相談しながら絞り込んでいきます。
色を選ぶ ─ それは、自分が今どんな気分か、何が気になっているかを 本人が知る時間 でもあります。「先週は明るい色だったのに、今日は落ち着いた色がいいんだね」と、スタッフが小さく気づきを返すと、本人もはっとした表情を見せたりします。
「布を作る」が「人に渡す」につながる
完成した作品は、季節のマルシェで展示・販売することもあります。
自分が織った布が、知らない人の手に渡る。「いくらにすれば適正か」「これって、私が思っているより価値があるのかも」と、価値の感覚も育っていきます。
「綺麗にできてるね」と他人から言われる経験は、家族からの「上手だね」とは、ちょっと違う重みがあります。第三者からの肯定 は、本人の中に静かに残るものです。
続いていくこと
火曜日のテキスタイリング部は、特別なことが毎週起きるわけではありません。
カタン、カタンと織って、糸が足りなくなったら新しい玉を選ぶ。途中で間違えたら、ほどいて戻る。完成したら、棚に飾る。次の週、また同じ机に向かう。
そういう「続けること」そのものが、いまの中高生にとって、貴重な時間になっているのかもしれません。